「人工関節は、ここまで進歩している」
●はじめに
  これからの人工関節は30年以上、さらには40〜50年以上耐用し得るものでなければなりません。
人工関節の寿命に大きく関係するのは、@人工関節の摩耗とA骨と人工関節をいかに長期間結合 させることができるかの2つです。

 

[1]人工関節の摩耗
  人工股関節の場合、摩耗に関しては従来のポリエチレンにガンマー線を照射することにより 著しく改善されました。 また、セラミックとの組み合わせの人工関節も摩耗が著しく減少します。
  人工膝関節の場合、股関節とは関節面の形状と関節の動きが全く異なりますので、 現在のところ、未だ人工股関節と同じ材料を使うことはできません。 しかし、金属を使っている部分をセラミック(アルミナ、ジルコニア)にかえることにより、 相手方のポリエチレンの摩耗が著しく少なくなります。
また、最近はある種の金属を高温で熱処理することにより、金属の表面にセラミック (ジルコニア)が析出して、金属の表面にセラミック(ジルコニア)で被われる材料が 開発され、すでに臨床に使われています。これはセラミックと金属の優れた性質のみを 組み合わせた材料といえます。これをオキシニウムと呼んでいます。

 

[2]骨との固着
  骨との固着に関しては、従来用いられている人工股関節では約15年の耐用年数が平均的なところです。 その大きな理由は骨の老化、すなわち、手術した後、年数がたちますと骨粗しょう症がおこって くることが最大の原因です。
骨を顕微鏡で観察しますと、細かい柵状をした骨梁が海綿状に網目を形作っています (図1-A)年をとって骨の老化がすすんできますと、骨粗しょう症となります。 また、女性が閉経後にホルモンの影響によって、骨粗しょう症がおこってくることがしばしばあります。 骨粗しょう症になりますと、細かい柵状の骨梁が更に細くなり、この骨梁の数も少なくなってしまいます (図1-B)
 
  人工関節手術をした後に、このような変化がおこってきますと、人工関節と骨との間にどのような変化が みられるのかを考えてみましょう。
   
  A)骨粗しょう症がおこった後に人工関節と骨との間にみられる変化:
  人工関節を入れて数年後位では、人工関節と骨との間にはすき間が見られません。
一般的におこなわれている従来通りの人工関節であれば15〜20年経過しますと 骨の老化とともに骨がやせて、骨梁が細くなり、数も少なくなりますので、やがて、骨と 人工関節の間にすき間ができはじめ、更に進行しますと、人工関節がゆるんできます。
この事について、次のようないろいろな人工関節と 骨との固着法において、どのように変化するかを説明しましょう。
 
  (図2)は人工関節手術をした後の図です。理解しやすくするために 人工関節と骨との結合部分の一部分(図2のの部分)を顕微鏡で 大きく拡大して観察してみます。
  B)種々の固着法:
  1)骨セメントによる固着(図3)
 
  2)骨セメントを使わない固着(セメントレス)
  a) 人工関節の表面に微細孔が作られていてこの微細孔の中に骨が侵入
して固着する。(ポーラス)(図4)
 
  b) 人工関節の表面に水酸アパタイト(骨の成分)がコーティング(被覆)
されていて、骨と化学結合する。(図5)
 
  1)骨セメントによる固着(図3)
  Aは手術した後、骨が丈夫な時
Bは骨粗しょう症がおこり、骨梁が細くなり、数も少なくなって来て、骨セメントと骨との間に すき間が出てきた状態です。これが人工関節のゆるみの原因になります。
  2)骨セメントを使わない固着(セメントレス)(図4、5)
  a) 人工関節の表面に微細孔がつくられている(ポーラス)(図4)
Aは手術直後であり、Bは手術2〜3週間後で、微細孔中に新しくできた骨が入って来て、骨と人工関節は固定されます。
Cは15〜20年以上経過して、骨粗しょう症がおこり、骨梁が細くなり、数も少なくなって、 人工関節と骨との間にすき間が出て来た状態です。
これが人工関節のゆるみの原因です。
  b) 人工関節の表面に水酸アパタイトがコーティング(図5)
Aは手術直後であり、Bは手術2〜3週間後であり、コーティングされた水酸アパタイトと 新しくできた新生骨とは化学結合して、人工関節と骨とは固定結合しています。
しかし、コーティングした水酸アパタイトは、焼成(高温で焼く)されていないので、 結晶成分が少ないために、10年前後で水酸アパタイトは消えて無くなってしまいます。即ち、 10年前後しか水酸アパタイトの役目を果たしません。
従って、従来から使用されているすべての人工関節では15〜20年以上経過し、老化して、 骨粗しょう症が発生してきますと、人工関節と骨との間にすき間ができ、これが人工関節の ゆるみの原因になります。
C)界面バイオアクティブ骨セメント:(図6)
 
  しかし、ここで、これらの問題点をすべて解消するように、私が20年前に考案し、17年前より全員の患者さんに 行ってきた界面バイオアクティブ骨セメント法について考えてみましょう。
これは、手術中に骨セメントを使う直前に、骨の表面に水酸アパタイトの微小顆粒(0.3〜0.5mm)を 塗布し、この上に骨セメントを置きます(A)。
このようにしますと、骨セメントとアパタイト顆粒は骨セメントが硬くなると同時に結合します。1〜2週後 にはアパタイト顆粒のすき間全体に骨が入ってきて、骨とアパタイトの間に骨の層ができ、骨とアパタイトは 化学結合します(B)。従って、結果的に骨と骨セメントはアパタイトを介して化学結合するので、強固に 固着します。
このように骨と骨セメントの間(界面)のみで化学結合するので「界面バイオアクティブ骨セメント」と呼んでいます。
このアパタイト顆粒は焼成(高温で焼く)していますので、完全に結晶化されています。 従って、このアパタイトは吸収されることがなく、 永久に残っています。アパタイトには骨誘導作用があり、 骨が存在している部分では骨を作り、常に骨と結合する働きがありますので、 骨粗しょう症がおこっても、アパタイトのまわりでは常に新しい骨が作られ骨と 結合しています(C)。従って、骨と人工関節はアパタイトを介して常に結合し、すき間が できることがありません。
長持ちする人工関節を考える場合、いつも骨の老化を無視してはなりません。
私はこの方法を20年前に考案し、17年前より臨床に使用して来ました。
私たちの臨床例をレントゲン写真で見ますと、手術直後と17年後とでは、 全く変化がおこっていません。これから推測しましても、30年以上は使用できると信じています。 更に、最近では摩耗の大変少ない材料を使っていますので、更に 長期間耐用しうると確信しています。

 

 

C)界面バイオアクティブ骨セメント:(図6)
 
  しかし、ここで、これらの問題点をすべて解消するように、私が20年前に考案し、17年前より全員の患者さんに 行ってきた界面バイオアクティブ骨セメント法について考えてみましょう。
これは、手術中に骨セメントを使う直前に、骨の表面に水酸アパタイトの微小顆粒(0.3〜0.5mm)を 塗布し、この上に骨セメントを置きます(A)。
このようにしますと、骨セメントとアパタイト顆粒は骨セメントが硬くなると同時に結合します。1〜2週後 にはアパタイト顆粒のすき間全体に骨が入ってきて、骨とアパタイトの間に骨の層ができ、骨とアパタイトは 化学結合します(B)。従って、結果的に骨と骨セメントはアパタイトを介して化学結合するので、強固に 固着します。
このように骨と骨セメントの間(界面)のみで化学結合するので「界面バイオアクティブ骨セメント」と呼んでいます。
このアパタイト顆粒は焼成(高温で焼く)していますので、完全に結晶化されています。 従って、このアパタイトは吸収されることがなく、 永久に残っています。アパタイトには骨誘導作用があり、 骨が存在している部分では骨を作り、常に骨と結合する働きがありますので、 骨粗しょう症がおこっても、アパタイトのまわりでは常に新しい骨が作られ骨と 結合しています(C)。従って、骨と人工関節はアパタイトを介して常に結合し、すき間が できることがありません。
長持ちする人工関節を考える場合、いつも骨の老化を無視してはなりません。
私はこの方法を20年前に考案し、17年前より臨床に使用して来ました。
私たちの臨床例をレントゲン写真で見ますと、手術直後と17年後とでは、 全く変化がおこっていません。これから推測しましても、30年以上は使用できると信じています。 更に、最近では摩耗の大変少ない材料を使っていますので、更に 長期間耐用しうると確信しています。
著:大西啓靖(医療法人寿会富永病院 大西啓靖記念人工関節研究センター

 
 
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